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シフト表に人件費を出す方法:時給×実働時間の式と人件費率(Excel・スプレッドシート)

店舗運営の経験にもとづく記事ではなく、公開資料と表計算の一般的な考え方を整理したものです。末尾の「制作について」もご覧ください。

この記事の計算は概算です。「時給 × 実働時間」だけを足します。深夜・時間外・休日の割増、交通費、社会保険料などは含みません。個々のお店の賃金計算が適法かどうかは判定できません。迷うときは労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

目次

  1. 先に決めること
  2. 1. 時給の列を置く
  3. 2. 1日の実働時間を出す(24倍と日またぎ)
  4. 3. スタッフ別の月合計
  5. 4. 日別の合計
  6. 5. 売上を入れて人件費率を出す
  7. 間違えやすい点
  8. この計算に入っていないもの(割増など)
  9. 無料ツールとの組み合わせ方
  10. 出典

先に決めること

無料のシフト表テンプレートは、勤務時間は出ても人件費の欄がないものがあります。手計算や電卓で別に足している場合、次の表で自動化できます。始める前に、お店のルールとして次の2点を決めておきます。

以下の例の店名、スタッフ名、時給、売上、勤務時間はすべて架空で、説明用の仮の数字です。実在の店の相場や、最低賃金の目安を示すものではありません(地域別最低賃金は、お住まいの地域の最新の公表をご確認ください)。

1. 時給の列を置く

スタッフごとの時給は、別の小さな表(スタッフ表)にまとめておくと、時給が変わったときに1か所を直すだけで済みます。シフトの記録表では、名前から時給を引いてきます。

この記事では、シフトの記録表をA1〜H6、スタッフ表をJ1〜M4に置いた例で説明します。1行が「1人の1日分の勤務」です。

シフトの記録表(A1:H6)

A 日B 名前C 開始D 終了E 休憩(分)F 実働(時間)G 時給H 人件費(円)
1見出し行
21青木10:0018:0060711007700
31井上17:0022:000510505250
42青木10:0015:000511005500
52井上17:0023:3030610506300
62上田18:001:0060610006000

A列の「日」は、説明を短くするため日付ではなく日にち(1、2)の数字にしています。本物の日付を入れても、後の式はそのまま動きます。

スタッフ表(J1:M4)

J 名前K 時給L 月の実働(時間)M 月の人件費(円)
2青木11001213200
3井上10501111550
4上田100066000

G2の時給は、名前(B2)をスタッフ表から探して持ってくる式です。

G2: =VLOOKUP(B2,$J$2:$K$4,2,FALSE)

G6まで式をコピーします。$は「コピーしても範囲がずれない」ための固定です。スタッフ表の名前に表記ゆれ(「青木」と「青木 」の空白など)があると探せずエラーになるので、名前は同じ書き方にそろえます。

2. 1日の実働時間を出す(24倍と日またぎ)

表計算ソフトでは、時刻は「1日 = 1」とする小数で保存されています。8時間は 8 ÷ 24 = 0.333… です。そのため、終了から開始を引いた結果をそのまま時給に掛けると、金額が約24分の1になります。時間数にするには24を掛けます。休憩は分で入れているので、60で割って時間に直して引きます。

F2: =ROUND(MOD(D2-C2,1)*24-E2/60,2)

日またぎの式は、開始と終了が同じ時刻(0時間)の場合は0を返し、24時間とはみなしません。24時間通しの勤務を入れる想定の店では、別の工夫が必要です。

1日の人件費は H2 に =F2*G2 と入れ、H6までコピーします。F列の表示形式は、時刻ではなく「数値」にします(時刻形式のままだと「7:00」のように表示され、掛け算の結果が分かりにくくなります)。

3. スタッフ別の月合計

スタッフ表の L2 に実働時間の合計、M2 に人件費の合計を出します。

L2: =SUMIF($B$2:$B$6,J2,$F$2:$F$6)

M2: =L2*K2

L2は「B列が J2(青木)の行だけ、F列を足す」式です。青木は7 + 5 = 12時間、12 × 1100 = 13,200円になります。L4までコピーします。

H列(1日分の人件費)を作らずに、1つの式で出す方法もあります。

=SUMPRODUCT(($B$2:$B$6=J2)*$F$2:$F$6*$G$2:$G$6)

これは「名前が一致する行は1、一致しなければ0」を掛けて、時間 × 時給を一括で足します。結果は M2 と同じ13,200円です。記録行が増えたら、範囲の「6」を最終行に広げます。範囲に文字(見出しなど)が入ると計算できないので、見出し行は含めません。

4. 日別の合計

日ごとの人件費は、日別の小さな表に出します。O列に日にち、P列に売上(次の章で使います)、Q列に人件費を置きます。

Q2: =SUMIF($A$2:$A$6,O2,$H$2:$H$6)

O 日P 売上(円)Q 人件費(円)R 人件費率
21520001295024.9%
32980001780018.2%
4合計1500003075020.5%

1日目は 7,700 + 5,250 = 12,950円、2日目は 5,500 + 6,300 + 6,000 = 17,800円です。合計行は P4: =SUM(P2:P3) と Q4: =SUM(Q2:Q3) です。1か月分なら、日にちが31行並び、合計は =SUM(Q2:Q32) のようになります。

5. 売上を入れて人件費率を出す

人件費率とは、人件費が売上の何割にあたるかを示す割合です。人件費 ÷ 売上で求めます。同じ人件費でも、売上が多い日は率が下がり、少ない日は上がります。シフトの組み方を見直すときの、1つの見方として使われます。

「何%なら適正」という目安は、この記事には書きません。業種、立地、営業形態で大きく変わり、日本の公的な資料でそのまま使える数字を、この記事の作成時には確認できていないためです。まずは自店の過去の数字を並べて、自店の中で比べるのが確実です。

売上P2、P3は手で入れます(POSやレジの日計を転記します)。

R2: =IF(P2=0,"",Q2/P2)

売上が0や空欄の日に割り算すると #DIV/0! のエラーになるため、IFで空欄にしています。R列は表示形式を「パーセント」にします。1日目は 12,950 ÷ 52,000 = 24.9%、2日目は 17,800 ÷ 98,000 = 18.2% です。

合計行は R4: =IF(P4=0,"",Q4/P4) で、30,750 ÷ 150,000 = 20.5% です。月の人件費率は、日ごとの率の平均ではなく、人件費の合計 ÷ 売上の合計で出します。この例では、日ごとの率(24.9%と18.2%)を単純に平均すると21.5%になり、合計から出した20.5%と食い違います。売上の大きい日の重みが違うためです。

間違えやすい点

間違い何が起きるか防ぎ方
24を掛け忘れる8時間が0.33として扱われ、人件費が約24分の1になる実働時間の式に *24 を入れる。結果が「1日の時間数」に見えるか確認する
日またぎでMODを使わない終了が開始より早いと、実働が負の値になるMOD(終了-開始,1) を使う
時刻が文字として入っている計算されず #VALUE! になる、または0になる「10:00」のように入力し、セルが時刻として認識されているか確認する(左寄せの文字なら文字)
時間の合計が24時間を超えて表示がおかしい時刻形式のままだと、25時間が「1:00」と表示されるこの記事の式のように、時間数を数値にして足す。時刻形式で足すなら [h]:mm の表示形式にする
時給を式の中に直接書く時給が変わったとき、全部の式を直す必要があるスタッフ表に置き、VLOOKUPで引く
範囲が最終行まで届いていない行を足しても合計に入らない範囲の行を余裕を持って広げるか、表を範囲指定して使う
月の率を日の率の平均で出す合計から出した率と食い違う合計 ÷ 合計で出す

式の引数の区切りは、日本語環境のExcelとGoogleスプレッドシートではカンマです。環境によってはセミコロンの場合があります。式は、ExcelとGoogleスプレッドシートで共通の関数だけを使っていますが、この記事の作成時には、両方のソフトでの実際の動作確認はしていません(下記「制作について」参照)。

この計算に入っていないもの(割増など)

ここまでの人件費は、時給 × 実働時間の概算です。次のものは含まれていません。

厚生労働省のFAQ(法定労働時間と割増賃金について)には、割増賃金の率として次のように書かれています(確認日:2026年11月7日)。

このほか、1か月の時間外労働が60時間を超えた分の割増賃金率は、50%以上と定められています。中小企業にも2023年4月1日から適用されています(厚生労働省 北海道労働局の案内、確認日:2026年11月7日)。この記事の式には含めていません。対象になるかどうかは、事業の規模や勤務の実態で変わるため、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

どの勤務が対象になるか、法定休日がいつか、他の条件がどう関わるかは、お店ごとの契約や就業規則で変わります。この記事は、個別のお店の割増の要否や金額を判定しません。実際の支給は、上の資料と専門家でご確認ください。

割増を別列で足す場合の式の形

割増を足したい場合は、割増の対象になる時間数を別の列に入れ、率はセルに置いて参照します。たとえば、I列に「割増の対象時間」、セルO8に率(例:0.25)を入れておくと、割増額を入れる列(空いている列)の2行目は次の式になります。

=G2*I2*$O$8

説明用に、架空のスタッフ上田(時給1,000円)の勤務のうち、22:00〜翌1:00の3時間を、上の資料にある深夜業の2割5分として足す例を計算すると、1,000 × 3 × 0.25 = 750円です。これは式の使い方を示すための計算で、上田さんの勤務が実際にどう扱われるかを示すものではありません。割増は法令で「以上」とされているため、お店の取り決めによってはこれより高い率を使うこともあります。

無料ツールとの組み合わせ方

この記事と同じサイトのかんたんシフト表には、人件費や時給の欄はありません。ツールが出すのは、スタッフ別の勤務日数と勤務時間(休憩を引いた合計)、日ごとの出勤人数と過不足です。終了が開始以前の勤務は翌日にまたがるものとして計算します。割増や法令の判定もしません。

ツールでシフトを組んだあとは、次のように使えます。

  1. ツールの「スタッフ別の月間集計」で、スタッフごとの月の勤務時間を見る(CSV出力にも「勤務時間(h)」の列があります)。
  2. 表計算ソフトのスタッフ表に、その時間を L列(月の実働)として入れる。
  3. M列の =L2*K2 で、スタッフ別の人件費を出す。

日別の人件費まで出したい場合は、この記事の記録表のように、日ごとの勤務を表計算ソフトに入れる必要があります。ツールのデータだけでは日別の金額は出ません。

出典

以下は厚生労働省の公開資料です。リンク先の内容は更新されることがあります。確認日:2026年11月7日。割増率の記述は、上のFAQの本文を確認して書いています。

制作について

この記事は体験にもとづく助言ではありません。記事の式と例の数字は、別のプログラムで同じ計算を行って一致を確認していますが、ExcelとGoogleスプレッドシートの実機での動作確認はできていません。誤りがないことは保証できません。実際の運用の前に、ご自身の表で小さな例を試し、出典を確認してください。この記事に広告や紹介リンクはありません。

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